IBDP(国際バカロレア・ディプロマ・プログラム)3つのコア科目の1つである、「TOK(知の理論)」は、私たちが当たり前のように学んでいる知識にはどのような性質があるのか、ということを科目の枠を取り払って探求するクラスです。科目の枠を超えて考えることで、世界で活躍する国際人として必要不可欠な多角的な視点や本物の思考力が身につきます。
先日のクラスでは、今学期のテーマの一つ、「共有された知識(私たちみんなが知っている知識)」と「個人的な知識(私のみが知っている知識)」から「ある学問体系や芸術分野に影響を与えた人物」について、生徒それぞれがプレゼンテーションを行いました。
プレゼンテーションでは、ダーウィン、アインシュタイン、イアン・ウィルマート(クローン羊ドリーを生み出した科学者)から千利休、菱川師宣など、洋の東西を問わず、さまざまな名前が並びました。これらの人物に共通しているのは、ひらめきや発見の背後には、必ず先人や同時代の人々によって生み出された知識の土壌に新たな知識を生み出した、ということです。例えば、江戸初期を生きた「浮世絵の祖」菱川師宣は、狩野派や土佐派の絵の技法を学び、その上で独自の絵の様式を確立します。その浮世絵は、江戸後期には偶然に海を渡りヨーロッパへ。ゴッホやマネなど印象派の画家に影響を与えました。
このように、個人は「共有された知識」から多くの影響を受け、同時に、個人の中で結びつき醸成された「個人的な知識」は「共有された知識」にも影響を与えています。人を介して知識は発展していきます。裏を返せば、歴史上の人物まで大きなことではなくても、すでに私たち自身もこのプロセスの中にいます。
以下、プレゼンテーションをした学生たちの感想です。
「プレゼンテーションのために、考えることで実感が湧いた。このプロセス自体も、自分を通して知識が共有されるプロセスだと思う」
「もし、菱川師宣が存在しなかったら浮世絵は存在しなかったのだろうか? それとも、他の個人がその知識を生み出すことができたのだろうか? 葛飾北斎やゴッホたちはどういった絵を描いていたのだろう? など『歴史の偶然』についてと疑問が浮かんだ」
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