前回は、IB認定校AIE国際高校ならではの英語力を伸ばす秘訣 その①として、「近年の英語教育の現状と課題」についてお伝えしました。
今回は、クラス運営の具体論をご紹介します。
英語的思考法のためのトレーニング
TOEFL Writing(英語上級レベル)
AIE国際高等学校の英語のクラスの一つ、「TOEFL Writing」では、英文ライティングを通して英語を学ぶだけでなく、英語による思考を徹底的にトレーニングします。
TOEFLは今後導入予定の4技能テストでも採用されたテストの一つです。主に米国、カナダ、オーストラリアなどの大学入学時に英語力を示す指標として提出する、英語能力試験です。難易度が高く、おそらく、今回採択された7つの試験の中でも最難関の一つといえる試験でしょう。
このクラスのポイントは以下の5つです。
ポイント① 洋書のテキストを使用
ポイント② ライティングに対する徹底した添削・毎回のショートスピーチ
ポイント③ 論理的思考力の研鑚
ポイント④ IB【国際バカロレア】プログラムと連動させた思考スキル育成
ポイント⑤ アカデミック・イングリッシュの養成
ポイント① 洋書のテキストを使用
TOEFL iBT対策の洋書をそのまま使用するので、使われる語句や表現が生きた英語です。日本の英語テキストでは回りくどい表現や構文が使われていることもありますが、このテキストでは伝えたいテーマに対して直接的に書かれており、語彙力を上げれば、実は読みやすい部分もあります。また、一つの単語でつまずいても読み進めていくうちに、前後の語句、段落、文脈、常識などから、知らない単語の意味を推測できるようになります。こうして、推測から理解を進めていく練習ができます。
ポイント② ライティングに対する徹底した添削、毎回のショートスピーチ
毎回の授業で、ライティング(アウトプット)に対するきめ細やかな指導を行います。
ライティングを伸ばす一番の方法は添削です。生徒は課題を提出する前に、自ら添削をして、ライティング力をブラッシュアップします。
① まずは自力で書く
② 添削をする
③ 書きなおす
ライティングは、手書きではなく、生徒に配布しているiPadか、パソコンを使用しています。日本人の記述がうまくならない要因の一つに、手書き文化があると考えられます。例えば、原稿用紙に文章を書くことを取り上げてみましょう。原稿用紙に1マスに1字ずつ手書きし、あとで構成を入れ替えようとしたら、修正だけでものすごい労力です。そこに妥協が生まれ、直すことを諦めて、推敲をする過程がなくなる場合があります。そのため、手書きでベストのライティングをするには、まず下書きをして、それを清書する、という無駄が生まれます。
一方、同じ手書きでも、アメリカの場合は、間違えた箇所に斜線を入れて消してその上に小さな字で書き足す、という文化があるので、推敲する過程が抜けません。
日本人がするような手書きは、自分の文章を十分に推敲して構成を練る、書き直すという作業には不向きです。また、今後増えてくるCBT(コンピューターを使用するテスト)形式では、タイピングも必須となり、ある程度のスピードでのタイピングスキルは非常に有効です。生徒は、毎週エッセイライティングをタイプ打ちして提出し、先生の添削を受けます。加えて、一人一分の英語スピーチを行います。(こちらは後述します。)
ポイント③ 論理的思考力の研鑚
英文ライティングの主なポイントは2つあります。
①英語表現、文法など、英語の観点
②内容の論理性
英語力、という面でもどちらも大切なポイントですが、米国大学で通用するライティングスキルを身につけさせることをクラスの最終目的として、①よりも②の論理性を重視しています。米国式のアカデミックライティングにおいて大切な、明確な主張、それを支えるトピックや根拠の組み立て、構成をマスターして、論理的思考(ロジカルシンキング)を鍛えています。
米国式アカデミックライティングでは、「起承転結」の結から始め、その理由とサポートをしながら文章を組み立てます。日本人は英語のライティングであっても、なじみのある「起承転結」の起から文章を始めてしまいがちです。結論がいつまでたってもわからない文章となってしまうため、何度も添削されてしまい、日本人が英語のライティングに苦手意識を持ってしまう原因の一つです。また、メインとなる議論の展開部で、いきなり具体論を書き始めてしまう場合も多くみられます。英文ライティングの型に沿っていると思っていても、日本式のライティングになっている場合が多いため、何度も書いて訓練することが大切です。
ポイント④ IB【国際バカロレア】プログラムと連動させた思考スキル育成
AIE国際高等学校は、一条校では兵庫県初、通信制では日本初となるIB認定校です。IBの学習で重要視されるのは、知識の積み重ねだけではなく、事柄の概念そのものを学び、現実世界に反映させる概念的学習です。そのためにも、今見ている世界がすべてではなく、よりよく、より創造的であるためのクリティカルシンキング(批判的思考)の育成は欠かせません。
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英語で思考を深く掘り下げる具体的なトレーニングとして、毎回のクラスでショートスピーチを行います。スピーチのテーマが1回完結ではなく、シリーズになっており、回を追うごとにテーマをさまざまな角度でとらえていきます。特に年度の後半では、スピーチのテーマは毎回抽象的なテーマになり、良いか、悪いかの二元論ではなく、答えがないテーマなります。生徒は自らの考えを英語で表現する訓練を行い、様々なテーマに対しての基礎知識や関心を広め、かつ、自らの意見を適切な英語で表現することができるようになります。
以下が、今学期に使用したトピック例です。
- In the student council’s meeting, propose the plan for asking together the school director to extend summer vacation.
(生徒会会議の中で、夏休みを延長することについて、学校理事に要求する計画を提案しなさい)
- What can we do to help people in other countries facing natural disasters?
(自然災害に直面している他国の人々を助けるために何ができますか?)
- What do you think are the major reasons that cause hate crimes, or the oppression on minorities and outsiders?
(ヘイトクライムや、マイノリティ、アウトサイダーへの抑圧を引き起こしている主要な理由は何だと考えますか?)
- How are people in different cultures motivated to take action by emotion such as fear?
(恐れのような感情は、どのように異なる文化の人々を、行動を起こすよう動機付けしているでしょうか。)
- How far can you say that things always have two sides?
(物事は二つの面を持っているとどの程度言えることができますか?)
また、言語のインプット、アウトプットという一方通行ではなく、双方向性の会話能力の育成も欠かせません。実際の会話のシーンでは、一方的に話すだけで終わることはなく、話が終わると必ず質問やフィードバックが返ってきます。それらに対し、さらに答えを返す練習が必要です。生徒は英語スピーチの直後に、必ず教諭から質問が投げかけられ、それらの問いに対して生徒は瞬時に英語で返答しています。こうした瞬間英作する力を養成して、英語で議論する能力を高めていきます。
ポイント⑤ アカデミック・イングリッシュの養成
TOEFLのテキストを使っていますので、TOEFL iBT WritingのIntegrated Task(2つ以上の技能を用いて解く問題)を活用しています。テーマごとに書かれた文章のリーディングと、同一テーマに対する教授のレクチャーのリスニングを行い、それぞれの情報を統合して要点をまとめるためのライティングを行います。その中で、重なる情報を統合して短くまとめる、すでにリーディング中で使われた表現を簡潔に述べるためのパラフレーズ(言い換え)をする、など本格的なライティングスキル、論理思考スキルを身につけさせることを目的にしています。
今回は、AIE国際高等学校の英語クラスの一部をご紹介しました。英語力を高める、といってもその方法や目的は様々です。AIE国際高校では、国際人に成長するために大切と考える、英語の文化的な背景から学びながら、英語の思考法をレベルごとに身につけていきます。英語力がつくだけに留まらず、発想法も変わることで、より視野が広がることを生徒たちは実感しているようです。